顧客の成功を見据えた納品資料とは?カスタマーサクセスの新たなアプローチ | Cone-os ナレッジ

顧客の成功を見据えた納品資料とは?カスタマーサクセスの新たなアプローチ

代表 / マーケター / デザイナー 佐藤 立樹

人材不足の進行や事業を運営する環境の変化により、営業組織の成果・スキルの標準化が求められるようになってきました。弊社Coneはその解決策が「人の代わりに働くコンテンツをつくる」ことだと考えています。

本連載は、コンテンツを効果的に活用する企業へのインタビュー企画「コンテンツセールス特集」です。

お話をうかがったのは、中小・中堅企業のマーケティング支援事業を展開するブランディングテクノロジー株式会社の黒澤 友貴さんです。

黒澤さんは、コンサルティングという無形商材において「納品資料」を提供することで、クライアントの長期的な成功を重視したアプローチを取っています。そのアプローチが、直接的な営業活動ではなく、カスタマーサクセスの文脈でのコンテンツの考え方・使い方で参考になる内容となっているため、顧客接点のポジションにいるビジネスパーソンはぜひご一読ください。

本記事は、コンテンツを効果的に営業活動に活用している企業へのインタビュー企画「コンテンツセールス特集」です。自社でこんな使い方をしているよ!という方はぜひ佐藤(@rk310117)まで!

黒澤 友貴さん(画像左)X:@KurosawaTomoki
ブランディングテクノロジー株式会社 執行役員CMO

中小・中堅企業向けのマーケティング支援に10年間従事。「日本全体のマーケティングリテラシーを底上げする」をミッションに10,000人近くのマーケターが集まる学習コミュニティ「#マーケティングトレース」を主宰。著書に『マーケティング思考力トレーニング』『マーケター1年目の教科書』(ともにフォレスト出版)

本当にクライアント組織が良くなるのか?からプロセスすべてを納品するように

  • 以前、弊社にクライアントの支援終了時に提供する納品資料の作成依頼をいただいたことがありますよね。納品資料とはどういうものなのですか?

私は普段、企業のコンセプト策定や戦略策定を支援しています。そのコンセプトとか戦略を作るプロジェクトの場合は、コンセプト策定や戦略策定そのものだけではなく、その策定の背景も含めて、クライアント社内共有をしていただくことが必要、という根底の考え方があります。

どういうプロセスでこの戦略に至ったのか、というところを資料にまとめて納品しています。ちなみに、佐藤さんとお話しているときに納品資料という名前では話していない気がします。

  • すみません!、僕がそうやって勝手に認識していたかもしれません。

戦略とかって納品っていう概念があまりなくて、なにをもって納品とするのかというところが曖昧になりやすいもので、納品義務がない契約だったりするんですよね。

納品物としてなにかを出さないといけないっていう形態ではないのですが、それだとプロジェクトの締まりが悪いみたいなところもそうですし、本当にクライアントの組織が良くなるのか みたいな疑問があって。

そこが曖昧だから確かに納品っていう区切りを作ってその資料を提出してるっていうところがあります。なので、納品資料といえば納品資料です(笑)

  • ありがとうございます(笑)、具体的にはどんな内容で資料を作成しているのでしょうか。

納品資料というカテゴリーの中で私が行っていることとしては、①プロジェクトの節目で1回その公式的な先方の組織に共有してもらう戦略そのものと策定プロセス・ネクストアクションをまとめた資料②議論してきたことを構造的に整理したNotion③より生々しいその議論してきたプロセス・なぐり書きが記されたMiroの3つを提供するようにしていて、すべてのプロセスを残すように意識しています。

たとえば、Miroを左から右に遡って見てみると、どんな議論でなにが決まっていったのかということがわかるようになっている、といったイメージです。

  • なるほど、それは広告レポートの提出とは少し色が違うのでしょうか。

他社さんがどうしているのかは正確にはわかっていはいないですが、レポートだと何パターンの仮説からこれが選ばれたのか、のようなプロセスが見えない。

戦略って大体なにかを参照しているじゃないですか。AとBをうまく組み合わせて、Cを参照にしてこの戦略ができた、みたいな。なにを定義したのかよりなにを参照したのかのほうがより重要だと感じています。

それが抜け落ちるのがレポートなんじゃないかなぁと思っていて。最近、レポート含め議事録とかも全部AIで取るじゃないですか。綺麗に整形された情報が納品されるのはもうどこもやることになるんですよね。

戦略は結局どこも同じものが生まれてしまうし、結果的になんか似たり寄ったりのアウトプットになってきたりする。

どこに寄り道したのか、みたいなところとか、もう少しモヤモヤポイントがどこだったのか とか、なんかそういうプロセス自体に価値が出てくるんじゃないかと思っています。それがあれば、失敗や思考をクライアントが追体験できるので、クライアントの中長期的な成長につながると考えています。

「支援終了後の支援」としての資料

  • なるほど、たしかにレポートはその場の納得感はありますけど、他人事感は否めないですね。クライアントの中長期的な成長とおっしゃっていましたが、実現するのは難しいことのように感じます。どのように工夫されていますか?

納品資料のなかに、今後どういった学習をしていったほうがよいのか?ということを入れています

策定した戦略の実行部分を業務フローのなかに落とし込んでいく、というのは支援期間中に当然やるべきこと、さぼってはいけない部分です。

そのうえで、プラスαとして、引き続きこういうことは学んで実践していってください。という成果を出すまでに必要なことをクライアントに伝えています。

それは本読むとかではなくて、たとえばユーザーインタビューっていうのをこれくらいの頻度で、こういう流れでやったら〇〇がわかります、それを□□に活かしましょう。みたいなことですね。

私たちが提供するコンサルティングで立てた戦略はその時点の仮説なので、クライアントが自分たちで学習しながら検証していく必要があります。

その検証時に「定性的なリサーチが適しているのか、 もっと定量的な判断軸が必要なのであれば、マクロ環境のリサーチなりアンケートデータを取って検証を続けましょう」みたいな今後のクライアント社内で起きそうな課題の解決方法を先回りして案内していく、ための支援終了後の支援として納品資料をお渡ししています。

ある企業様との取り組みでコンセプト設計を支援したのですが、これまでプロジェクトでやってきたことを、これからどうやって組織内に浸透させようか、というのをクライアントのブランドマネージャーと一緒につくっていきました。

時間軸で見た時に、支援が終了しても終了後まで考えて、組織が学習していく流れを伝えていると、先方の社内でそれが展開されて各人が認識がつながっていくわけじゃないですか。

そうすると、また次にやりたくてもできない部分があれば、自分が支援させていただいたりみたいなところに繋がりやすいとか、こちら側の利点も当然あるんじゃないかなと思っています。

  • なるほど、クライアントの成果を考えれば自然と次も声をかけてくれるということですね。

クロスセル・アップセルはだいぶ勘違いされている

  • 実際に、納品資料提供後に支援依頼が来たことはあるのでしょうか。

すぐに来る!とかではないのですが、支援したプロジェクトの延長線上の別のプロジェクトの範囲で依頼が来ることが多いです。たとえば、戦略の立案支援後に顧客体験の設計をしていくところのプロジェクトでご一緒したりとかですね。

さきほどもお話しましたが「次はこれをやるので次の契約をしてください」ではなくて「次は御社内でこれをやっていってくださいね」と支援終了後の案内をしている結果として、ご一緒する機会が生まれる、という結果論的な感じですね。

  • なるほど、僕たちもクロスセル・アップセルは同じような考え方をしています。

あ、本当にそうで。クロスセルとかアップセルはだいぶ勘違いされていると思っていて。別の商材はこちらで、とか、振り返りの最後にこっちの商材もあります、とか。。そういうのは、顧客体験としてちょっと良くないと思っているんですよね。

クロスセル・アップセルは、こちらから提案するのではなくて、クライアント側から出てくるようにした方が良いですね。

  • クライアント側から要望が出てくるようにするにはどうしたらいいでしょうか。

クライアントの成功のために必要な道筋を伝えることができれば、クライアントからこれもできないですか?と依頼をいただけると思います。そもそも、その成功のための道筋がわかっていなければ伝えることもできないのですが、そこがクライアントワークの本質だと思います。

クライアントから要望が出てきてはじめて、自社が支援できる内容であれば尽力します。自社では対応できない範囲が含まれているならパートナーを探して協力して支援する。クロスセル、アップセルはこんなイメージですね。

  • なるほど、だからクライアントさんの営業資料の作成とかを弊社に依頼いただいているんですね。

そうですね。コンセプト設計だったり戦略策定段階のプロトタイプとして、LPだったり営業資料、バナーなどの簡易的な顧客接点の部分が必要になるので、それを依頼させていただいています。

クライアントを支援するときは、つくって検証して渡す、ことを意識していますね。それもクライアントから作ってほしいと言われているわけではなく、こちらから「戦略を策定するために実験して検証するために必要」なので勝手につくって勝手に納品しています。

私たちは、私たちよりもプロがいる場合はそこに依頼するようにしているので、そうはなりませんが、この営業資料だったり、LPだったりをブランディングテクノロジー内で完全に制作できる状態であれば、クロスセル・アップセルが成立するかもしれませんね。

  • 純粋に質の高いカスタマーサクセスですね(笑)

提供するのは「振れ幅」と「発見」がある情報

  • ここまで黒澤さんのお話を聞いていると、顧客の成果・成功のための支援という印象がかなり強いですね。

そうですね。代行ではなく支援、アウトソーシングではなくコンサルティングだからこそ、そこにこだわっているのかもしれません。

戦略をつくるときに”振れ幅を大きくする”ということを意識していて。たとえば、海外の動向を調査するという大きな視点、もう一方はユーザーインタビューとか競合利用ユーザー調査とかの小さな視点、その両視点から見たときの振れ幅から新たな発見が見つかることが多いんです。

その新たな発見がクライアントの成果につながると考えているので、納品資料もクライアントの中で”発見”があるように意識しています。資料を読むだけで新しい発見がある、ということが、クライアントの中で次の成果のための新たな課題を生んで、次の発注につながることがあるのではないかと考えています。

たぶんこの納品資料はマーケティング的に言うと1企業に対しての、お役立ち資料だったり、ホワイトペーパーと呼ばれるものなのだと思います。ただ、コンテンツの名前に左右されず、だから、納品資料とか営業資料とかじゃなく、シンプルに自社がクライアントの成功のために必要な情報を提供するというような考え方を大事にしています。

  • なるほど、最初に納品資料と言った覚えはない、とおっしゃっていた理由がわかりました。

そうですね(笑)Coneさんって見込み顧客の社内検討段階で使う資料も作ってますよね。

  • はい、費用対効果とか商談相手が社内稟議に回せる用の資料を、商談後に送付しています。

そうですよね。これも、結局同じだと思っていて。納品資料は、社内にプロジェクトを浸透させるために必要な情報で、検討段階で使う資料はクライアントが成果を上げるサービスを導入するために必要な情報。目的だったり活用場面は違えど、基本的には必要な情報を提供することが最重要ですね。

  • たしかに、キックオフミーティング資料とかもそうですね。顧客が成功するために知っておいたほうが良い情報を伝えたり、一緒に推進体制を決めていったりしますね。
  • 顧客の成果を第一に考えるから黒澤さんにクライアントから声がかかるんだなぁと感じました。黒澤さん、本日はありがとうございました!!

まとめ

黒澤さんのお話を聞いていると、顧客の成功を第一に考えたコンテンツ作りの大切さがよくわかりました。

コンテンツマーケティング同様、結局「顧客と接する各プロセスで、顧客が必要としている情報を提供すること」にフォーカスすると、自社もクライアントも成果が上がるのだと再認識することができました。

本記事を読んだ方はぜひ「どんな情報を提供すれば喜ばれるのか」「顧客が今後成功するために必要な情報はなにか?」から考えてみていただきたいと思います!

本記事は、コンテンツを効果的に営業活動に活用している企業へのインタビュー企画「コンテンツセールス特集」です。自社でこんな使い方をしているよ!という方はぜひ佐藤(@rk310117)まで!

代表 / マーケター / デザイナー

佐藤 立樹

立命館大学在学中に、ベンチャー2社でインターンを経験し、卒業と同時に株式会社Coneを設立。資料作成代行サービス「c-slide」を運営。リリース後1年半で支援企業300社を突破。セールス/マーケ領域の資料が得意。

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