DSR(デジタルセールスルーム)とは?基本的な機能・使い方と運用開始手順
本記事では、DSR(デジタルセールスルーム)の概念の説明と基本的な機能について説明をします。その中で機能の使い方であったり、実際運用するとなった際のステップについてもまとめていますので、そもそもDSRについて知りたい方はもちろん、DSRツールの導入を検討している方もぜひご一読ください。
目次
DSR(デジタルセールスルーム)とは
DSRとは「Digital Sales Room(デジタルセールスルーム)」の略称(以降DSR)で、BtoB企業が未商談の顧客や、商談済みの顧客と議事録等の情報や営業資料などの営業コンテンツを共有できるオンライン上の部屋(ルーム)のことです。
営業としては、顧客に検討してもらうにあたり必要な情報やコンテンツを効率的に共有することができるだけでなく、閲覧ログを測りよく見られているコンテンツを計測できたりと、営業の質を高めることにも役立ちます。
顧客としては、検討に必要な情報が一箇所にまとまっているので、わざわざメールを検索せずとも見ることができたり、メッセージ機能による不明点の解消、依頼の際の契約手続きなどをルーム内で済ませることができます。
また、DSRは、一般的に営業担当者と見込み顧客の初回商談の前に作成され、以降はDSR内でのやり取りが可能になるというスキームです。
主に顧客に公開する情報としては、
- サービス紹介資料
- MTGのアジェンダ
- 問い合わせ内容への回答コンテンツ
- 製品カタログ
- 価格表
- 契約書
など、これまでメールでやり取りをしていたデータや、URLを送りわざわざ見てもらう必要があったコンテンツを集約することが可能になります。
DSRの必要性
マッキンゼーによる調査では、BtoB営業における70~80%の意思決定者は対面での会議による情報提供よりも、デジタルでのやり取りや自分自身で意思決定ができるセルフサービス方式を好んでいるというデータも出ています。
上記の調査結果からも、顧客の情報収集や意思決定はオンライン上が主になっていく方向性であるのは明らかであり、逆にオンライン上で情報を公開していない、デジタルでやり取りできる選択肢を用意していないと顧客から選ばれないサービスになってしまうかもしれません。
このような背景から、デジタル上で営業担当者と顧客とのやり取りが完結するDSRツールは今後必要性が増していくことが予想されます。
SFAとの違い
SFAとDSRの大きな違いとしては、情報やコンテンツが誰向けのものであるかです。
SFA | DSR | |
---|---|---|
誰向けのツールか | 社内向け (主に営業部長やセールス) | 社外向け (主に顧客) |
導入目的 | 営業状況の可視化や分析 | 顧客の購買行動のサポート |
特徴 | 定量データの計測が得意 (ダッシュボードなどで定量分析を出せる) | 定性データの提供が得意 (顧客の課題や、取り組み方の情報提供など) |
SFAとDSRには上記のような違いがありますが、どちらか一方を導入すれば良いというものではありません。
そもそもSFAが社内向けなのに対し、DSRは社外向けのツールであるということ。また、得意としているデータにも違いがあるので、どちらかだけを活用するのではなく、どちらも上手く活用することで営業活動の成果に近づくことができるでしょう。
DSR(デジタルセールスルーム)の機能と基本的な使い方
DSRでは、これまで営業が個別でかつさまざまなツールを活用して対応していた業務を1箇所に集中し、かつ顧客とのコミュニケーションまでもがツール内でできるという、ハブ的な部屋を提供するように設計されています。
DSRの機能は下記の表を確認ください。
機能 | 概要 |
---|---|
製品情報、価格情報の掲載 | 最新の製品情報と価格の掲載を一元管理することが可能 |
営業コンテンツの設置 | サービス紹介の動画や資料、事例記事、個別向けの動画メッセージなど主要な営業コンテンツの設置が可能 |
エンゲージメント分析 | 顧客がどの資料を何回読んでいるかなど、ログを計測することで、自社サービスへの興味度合いを分析することが可能 |
リアルタイムのコミュニケーション | セールスルーム内でチャット等によるリアルタイムなコミュニケーションが可能 |
相互タスク管理 | 商談終了後のタスク管理や顧客と決めたネクストアクションの共有が可能 |
案件の承認機能 | 電子署名機能が付いており、顧客は簡単に契約書に署名し、NDA、ライセンス契約、利用規約などの文書を確認することが可能 |
SFA/CRM連携 | SFA/CRM連携ができるので、顧客とのやり取りをすべて記録可能 |
パーソナライゼーション | 顧客ごとにルームを作成でき、個々のニーズに合った優れた顧客体験の実現が可能 |
基本的な使い方は以下3ステップです。
- 商談情報を入力
- Webページに情報集約 / 共有
- 閲覧状況 / 検討状況の確認とフォロー
1. 商談情報を入力
まず、顧客との商談が設定されたタイミングや商談が終了したタイミングで、個社ごとのページを作成します。ここでは、顧客の会社情報や商談の議事録などを入力します。入力した情報はSFA等に連携することも可能です。
ここでの活用する機能
- パーソナライゼーション
- SFA/CRM連携
2. Webページに情報集約 / 共有
商談情報の入力が完了すれば、次は顧客に送りたい情報をまとめます。商談前であれば、商談のアジェンダや製品情報を共有したり、商談後であれば録画データや、営業資料を共有したりします。この際に商談で決めた相互タスクを共有することも可能です。
また、チャット機能によるコミュニケーションなども可能なので、案件の進行に向けて、相互コミュニケーションを図ります。
ここでの活用する機能
- 製品情報、価格情報の掲載
- 営業コンテンツの設置
- 相互タスク管理
- リアルタイムのコミュニケーション
3. 閲覧状況 / 検討状況の確認とフォロー
DSRツールでは、エンゲージメント分析ができるので、資料が閲覧されたタイミングや、誰がどの資料を何回見たかなどのログも確認することができます。見ている回数が多ければ恐らく前向きに検討してくれている可能性が高いので、適切なコミュニケーションを図り、顧客にとって迷惑とならないクロージングも可能です。
また、案件の承認機能もあるので、もし依頼が決定した場合は、チャット機能にて依頼の連絡がきたり、ツール内で契約書の締結やNDAの締結も可能です。
- 案件の承認機能
- リアルタイムのコミュニケーション
- エンゲージメント分析
DSR利用のメリット
DSR利用のメリットは、2つの視点から考えることができます。まずは使用する営業側、そして顧客側です。以下に両者がDSRを利用した際のメリットを説明していきます。
営業側のメリット
まず、営業側のメリットは2点あります。
- 営業活動に有用なコンテンツを判別できる
- 営業情報、コンテンツを一元管理できる
営業活動に有用なコンテンツを判別できる
DSR上で公開している営業資料や提案資料の閲覧ログなどから、どの資料が最も回数を読まれているか、どの資料を社内で共有しているかなどを確認することができます。
また、見せるコンテンツを顧客ごとに変えることで、コンテンツのABテストができたり、〇〇という課題を抱えている顧客、〇〇業界の顧客など、顧客属性に合わせたコンテンツの設置が可能になります。
このような顧客属性に合わせたコンテンツを活用することで、顧客の検討度合いを上げることに役立ちます。
営業情報、コンテンツを一元管理できる
設置した営業コンテンツや、顧客の検討から購買に至る一連の情報をDSR内で一元管理することで、営業担当者の業務効率が向上します。
製品、価格、契約に関する最新情報に瞬時にアクセスできるため、営業チームの情報共有の場としても活用することができるでしょう。
また、ユーザー情報も一元管理も可能です。担当者含め決裁者の方をまとめてルームに招待したり、グループチャットなども利用できるため、顧客管理が簡単になるのはもちろん、顧客のリードタイム短縮にも繋がります。
顧客側のメリット
顧客側のメリットも2点あります。
- 検討事項の即時的な解決が可能
- 顧客の利便性が上がる
検討事項の即時的な解決が可能
デジタルセールスルーム上で、MTGの予約やチャットを利用した質問相談などができるため、検討にあたって相談したい内容を営業担当にすぐに確認することができます。。
また、共有されているコンテンツをいつでもすぐに見ることができるため、わざわざ営業担当に問い合わせたりする必要もなく、効率性も向上するのです。
顧客の利便性が上がる
営業担当とのやり取りが重なると、メールは長いスレッドになり、複数の添付ファイルが付くので、時間が経つにつれて欲しい情報を探す手間が増えます。
しかし、デジタルセールスルームでは、ルームにアクセスするだけで、営業担当者が顧客のために集めた営業コンテンツを確認することができます。
必要な情報は一つのルーム内に集まっており、さらにその情報の共有も簡単にできるため、メールを探したり上司に転送したりする必要がありません。
DSR(デジタルセールスルーム)導入に向いている企業の特徴
DSRは、顧客の課題や目標の整理、取り組む理由や取り組み方の情報提供など、定性情報の提供を得意としているため、「他社比較で負けてしまう」「リードタイムが長い」といった課題感を解決することができます。
他社比較で負けてしまう場合は、恐らく他社と比べた時に、顧客が検討するにあたっての情報量が足りていない可能性があります。
そもそも金額で負けているというような場合は除いて、商談内で伝えきれなかった情報、また追加で知っておいて欲しい情報などをDSR内で共有することで、他社に勝てるかもしれません。
また、リードタイムが長いサービスでもDSRは向いていると言えるでしょう。これまでメールでやり取りしていた内容を1箇所に集めるだけではなく、顧客のアクセスしたタイミングや、欲しい情報の共有依頼などがDSRで確認できるので、セールスも顧客側も瞬時に欲しい情報にアクセスすることができます。
上記のような課題を持っている場合、定性情報を活用して顧客の検討を進めることが得意なDSRの導入がおすすめです。
【逆に向いていない企業の特徴】
向いていない企業の特徴としては、初回商談もしくは、商談をせずとも成約に至ってしまうサービスを展開している企業は、DSRの導入に向いていないかもしれません。
DSRは顧客が検討するにあたっての体験を向上化させることが、強みの一つであるので、そもそも検討期間が無いサービスについては、DSRを利用せず、まず向けに広報ができるMAツールなどの方が相性が良いかもしれません。
DSR(デジタルセールスルーム)運用成功 / 定着のためのステップ
では、DSRをもし導入するとなった場合、運用成功 / 定着のための4つのステップについて説明していきます。
- 営業プロセス課題の明確化(dsrを導入するための)
- 必要コンテンツ整理(dsrで送るための)
- 運用方法・体制の明文化(dsrを定着させるための)
- 効果測定・コンテンツ改善(dsrをうまく活用するための)
1. 営業プロセス課題の明確化(dsrを導入するための)
DSRに限らず、セールステックにはそれぞれの製品の得意不得意があります。まず自社の営業課題を明確にして、その課題に合った製品を選びましょう。
例えば、「比較検討に負けてしまう」という課題があれば、「顧客が検討しやすいよう他社よりも詳細な情報をDSRツールで出そう」など、具体的にDSRの使用方法が整理されていれば、製品選びや導入後の取り組みがスムーズに進みます。
また、DSRでは無くとも、Cone-osの営業プロセス標準化支援では、資料コンテンツの整備と体制構築の支援により営業組織の脱属人化を図ることができるので、ツールの導入が難しい場合は、営業コンテンツ制作の依頼を検討してみるのも一つかもしれません。
2.必要コンテンツ整理(dsrで送るための)
先ほど例に挙げた「比較検討に負けてしまう」のであれば、例えば以下のようなコンテンツが有効です。
営業資料 | 営業時に使用する資料 |
サービス紹介資料 | サービス紹介に特化した資料 |
社内検討用資料 | 担当者が社内で話をしやすいよう、ヒアリング内容等含めた上申用資料 |
料金表 | 自社と他社の料金の違いはもちろん、何が違うから料金に差が出ているのかを説明 |
導入事例資料 | 自社サービスを活用し上手くいった事例をまとめた資料 |
業界別フック資料 | 業界別に提案内容や事例をまとめた資料 |
課題別フック資料 | 課題別に提案内容や事例をまとめた資料 |
導入事例記事 | 導入事例インタビューなどの記事 |
商談録画データ | オンライン商談の場合、録画をしてデータ化 |
上記のようなコンテンツを用意しておくと、顧客属性ごとに共有する資料を変えることができます。他社がどの顧客にも同じ資料を展開している場合、このように属性ごとに共有する資料を変えるだけで、差別化を図ることが可能です。
また反応が良かった資料は他の営業にも共有することができ、スキルの標準化を図れたりと、DSRツールを利用するにあたって、資料コンテンツは必ず用意すべきです。
もし自社で資料を用意することが難しければ、BtoB領域に特化した資料作成代行サービス「c-slide」を利用をおすすめします。
3. 運用方法・体制の明文化(dsrを定着させるための)
コンテンツの用意ができれば、営業フローのどのタイミングでDSRを活用するかを決めます。多くの企業では、商談が設定された後にDSR内で顧客ごとのルームを作成し、当日のアジェンダや事前に確認しておいてほしい資料などを共有します。
商談後は、検討にあたって必要なコンテンツをルーム内で共有します。この際は、A属性の企業であれば、A資料を送る、B属性であればB資料を送るなど、ヒアリング内容などを加味しながら送付パターンをいくつか用意しておきましょう。
4.効果測定・コンテンツ改善(dsrをうまく活用するための)
DSRの活用ができれば、次は効果測定を行います。効果測定では、「そもそもコンテンツが見られていない」のか「見られているけど効果がない」のかどちらかで判断すると良いでしょう。そもそも見られていなければ、3で決めた運用方法や体制が違っている可能性があります。見られているけどであれば、コンテンツの内容を改善する必要があります。
上記の効果測定、改善を一定のサイクルで行いながら、顧客への最適化を図るべきです。
主な国内DSR(デジタルセールスルーム)ツールの紹介
ここでは、主な国内DSRツールについて3つのサービスを紹介していきます。
contentswork
特徴
- 商談後の顧客の検討状況をスコアで可視化(未商談リードへの送付も可能)
- スコアが一定値に達すると自動フォロー実施
- ベンダーはBtoBコンテンツ制作支援会社のため「実行支援」まで対応可能
弊社Coneが提供する検討度可視化ツールcontentswork。商談後の顧客の検討状況をスコアで可視化することができることに加え、「なにに関心があるのか」まで把握可能なため優先度をつけた顧客フォローが実現可能。スコアが一定値に達すると自動で「依頼可否」の案内を実施するため、フィールドセールスの工数を削減しながら成果を最大化するツールとなっています。
また、ベンダーであるConeはBtoBの営業・マーケティング関連の資料コンテンツの制作支援実績900超となっており、見込み顧客の検討を促すコンテンツ制作支援も可能で「ツール」と「代行支援」を兼ね備えたサービス提供ができるのも特徴のひとつです。
- 料金:月額100,000円+5,000円 / ユーザー(※Standardプランの場合)
DealPods
特徴
- もともとは、SFA/CRM領域のツールを提供
- 自社SFA/CRMツールとの連携に強み
- その他SalesforceやHubSpotといったSFA/CRMツールとの連携可能
DealPodsは、日本初のデジタルセールスルームで、営業と買い手(顧客)の間に発生するコミュニケーションを一元管理できる「カスタマーコラボレーションプラットフォーム」です。
ベンダーは株式会社マツリカで、もともと「Mazrica Sales」などSFA/CRM領域のツールを展開していました。
自社ツールとDealPodsとの連携はもちろん、SalesforceやHubSpotといったSFA/CRMツールとの連携も可能です。
- 料金:月額システム利用料+ 7,000円 / ユーザー(※Basicプランの場合)
openpage
特徴
- もともとはカスタマーサクセス支援の会社
- 大手企業、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップ企業と広く支援
- 分かりやすいUIと直感的な操作性で、ITツールのリテラシーが無くても利用可能
openpageはもともと、カスタマーサクセスの支援を行なっていた会社で、そこで得た知見をDSRツールとして開発し、サービス展開している会社です。
利用企業としては、大手企業、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップ企業と広く支援していることが特徴です。
分かりやすいUIと直感的な操作性で、従来ITツールを導入しない業種の顧客にも受け入れられており、さまざまな業界においても利用されています。
- 料金:要問い合わせ
まとめ
これまでDSRについて説明をしてきました。今はまだあまり世の中に浸透していないDSRという概念ですが、マッキンゼーの調査にもあった通り、今後はどんどん活用されていくでしょう。
最後に営業側、顧客側それぞれのメリットを改めてまとめておりますので、導入を検討する際の参考としてください。
営業側のメリット | 顧客側のメリット |
---|---|
営業活動に有用なコンテンツを判別できる | 検討事項の即時的な解決が可能 |
営業情報、コンテンツを一元管理できる | 顧客の利便性が上がる |
弊社Coneは、デジタルセールスを実現するツール「contentswork」の提供に加え、コンテンツの制作支援も提供しています。ツール導入検討の前にコンテンツの整理をしたいといった場合はお気軽にご相談ください。(⇒ 営業プロセス標準化支援)
ここまでお読みいただきましてありがとうございました。本記事が少しでもDSRについて理解を深めるきっかけになれば幸いです。