商談後の送付で比較検討の勝率が上がる「社内検討用資料」とは? 挿入必須の4スライドも解説
セールス・イネーブルメントがトレンドであるように、営業組織の成果・スキルの標準化を図りたいと考えている企業が増えています。一方で、SFAやSales Techでそれを実現しようとするとハードルが高く苦戦することも。そんな中、著者が経営するConeでは「資料」というコンテンツを活用することで営業標準化を実現するコンテンツセールスという手法をクライアントに提供しています。本連載では、脱属人化を図るコンテンツセールスという手法について具体的に紹介していきます。第3回は「商談後に送付すると比較検討の勝率が上がる“社内検討用資料”」について解説します。
2024年10月に佐藤がSalesZineに寄稿した記事です。
※ 出典:商談後の送付で比較検討の勝率が上がる「社内検討用資料」とは? 挿入必須の4スライドも解説
受注率向上には商談後のアクションが重要
すべての商談が即受注になるわけではなく、「検討します」と言われてからが本番ということがほとんどでしょう。商談後に営業担当が行う「追いかけ業務」によって、成果は大きく左右されます。なぜなら検討期間中に多くの見込み顧客が離れてしまうからです。
ガートナー社の調査によると、BtoBの購買意思決定に関わる人数は平均11人とされており、商談後の検討期間は必然的に長くなります。その期間中に「購買意欲の減少」や「社内状況の変化」によって、見込み顧客が離れてしまう可能性があることは容易に想像ができるでしょう。
この検討プロセスにおいて、適切なフォローを行うことができれば、受注につながる可能性があります。
また、シリウスディシジョンズ社(現Forrester社)の調査では、営業担当者が「見込みなし」と判断して、フォローしなかったリードのうち、8割が2年以内に競合他社から製品を購入していると言います。
逆に、この8割の「失注としてしまった顧客」に適切なフォローを行っていれば、受注につながる可能性があったということです。
つまり「商談後のアクション」次第で、受注率・数が大きく変わってきます。正しく顧客フォローを行うことができれば、受注率を向上させ、商談期間も短縮させることができます。
※ 参考1:Why Multithreaded Engagements Are the Secret to Accelerating Revenue Growth
では、検討期間中にどのようなアクションをすれば良いのか。「ご検討状況いかがでしょうか?」と架電やメールをしても状況が好転しなかった経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。そこでおすすめなのが、「社内検討用資料の送付」です。次項で詳しく見ていきましょう。
商談後に送付する「社内検討用資料」とは?
社内検討用資料とは「商談後に見込み顧客に送付する用に、営業資料とは別で作成する資料」のこと。
「(1)資料請求でダウンロードされる資料」「(2)商談で用いる営業資料」「(3)商談後に送付する資料」において、同じ資料を使い回すスタイルになっている企業も少なくないのではないでしょうか。
ひとつの資料を使い回さずに、わざわざ別のものを作成するのは、受注プロセスごとに顧客の知りたいことが違うからです。
顧客は、資料請求をしてから商談を終えるまで、次のような感情経路をたどります。
資料請求 | ・このサービスをもう少し詳しく知りたい ・料金/サービスの特徴は? |
商談 | ・なるほど、自社が活用するには?実際費用はいくら? ・どれくらいで回収できる?自社に近い状況から成果を上げた事例は? |
商談後 | ・上司に相談してみよう ・ほかの競合サービスはどんな感じかな |
ひとつの資料を使い回している場合、この上記3プロセスで見込み顧客が“異なる”情報を欲しているのにも関わらず、サプライヤーは“同じ”情報しか提供できていない、ということになります。
プロセスに応じて適切な情報を提供するために、複数の資料を用意する必要があります。それを、先ほどのプロセスで考えてみると次のようになります。
資料請求 | サービス紹介資料 → サービスの特徴や料金が載ってるダウンロードして読む用の資料 |
商談 | 営業資料 → 類似事例やコストシミュレーションなどの実際に導入イメージを説明する資料 |
商談後 | 社内検討用資料 → 社内で検討するために、商談で話したことや競合他社の情報が載っている資料 |
顧客の検討プロセスに応じて適切な情報を提供することができれば、比較検討勝率が上がります。そのプロセスの中で「商談後に送付するべきもの」が社内検討用資料になります。
先述のとおり、BtoBでは購買意思決定のプロセスに関わる人数が多いのが特徴。「資料請求→商談」では、Aさんが話を聞いたけど、「商談→商談後」では、AさんとBさんが相談している、という状況になります。Aさんは納得したけどBさんは「Aさんの話では納得できなかった」というオチになることもしばしば。
だからこそ、商談中に話したことを“読んでもわかるように”作り替えて、検討する際に必要な情報を追加した資料が必要なのです。
この社内検討用資料があることで、Aさん→Bさん(上司)に相談するときにAさんの説明によってBさんの解釈が変わることを防ぐことができます。
営業担当の「これを話すのを忘れていた」のようなコミュニケーションミスを防ぐこともでき、担当ごとの成果のばらつきの標準化もかなえることができます。
社内検討用資料に挿入必須の4スライド
商談後のアクションの重要性や、解決策として社内検討用資料について解説してきましたが、実際にどんな内容にすれば良いのかを解説します。
今回は、社内検討用資料に挿入すべき4つのスライド項目を紹介します(関連記事:「営業資料の作り方と必須4ページ。構成やデザインも解説(テンプレート付)」)
【1】競合比較表・ポジショニングマップ
競合との項目比較をすることで、見込み顧客の検討に必要な情報を提供し、比較検討勝率を上げるために活用します。
比較軸は、まずは「比較検討層の見込み顧客に質問されること」から多いものを。比較軸になにを設定すれば良いかわからない場合は、「自社サービスカテゴリ+選び方」で検索し、ヒットした記事から選ぶと良いです。
また、上記画像は5項目のグラフ比較になっていますが、基本的には「比較表」を用いて、できるだけ誰が見ても解釈が変わらない定量的な客観的項目を並べるようにするのがおすすめです。
【2】事例紹介
事例紹介スライドでは、「商談相手にかなり近い事例」を差し込みましょう。商談前にも、類似事例を選んで営業資料内で活用すると思います。しかし、その事例が商談中にあまり刺さっていなかったり、商談中に相手の部署や担当の課題感が明確になったりすると思います。そこで、商談後に事例を追加・差し替える工夫をします。
差し替えをスムーズに行うため、事例紹介ページについてはフォーマットを用意し、画像・テキストを入れ替えるだけで情報が変更できる状態にしておきましょう。
【3】費用対効果・コストシミュレーション
基本的にBtoBの購買理由は「導入して成果が出るのかどうか」。成果が出る裏づけ・後押しとして有効活用されるのがこのコストシミュレーションのスライドです。
このスライドも事例スライドと同じように「商談後に商談相手に応じて適切な情報に入れ替え」を行います。 商談相手の、商材種類・商材単価・部署規模・部署課題などを整理し、社内データから類似の事例を探し出します。そのデータを挿入することで、1対Nの多数を想定した汎用性の高い営業資料が、1対1の見込み顧客に向けた専用の提案資料に変わります。
「売上」や「コスト」に直結するデータが記載された資料を後送することで、営業先の社内稟議に関わる人全員が自分ゴト化することができ、比較検討の勝率向上が見込めます。
【4】FAQ
最後がFAQスライドです。商談後に行う工夫は「FAQに商談中のQ&Aを追加する」というものです。FAQページをコピペして、商談中に出た質問とそれに対する回答をまとめたページを作ります。
商談中に出た質問とその回答は、商談相手と自分の2者間でしか共有されていません。それがもし見込み顧客にとって重要なポイントだったとしても、営業先の社内稟議では共有されることはありません。見込み顧客からすると二重確認の手間も省けるため、商談中のQ&Aページを作ることをおすすめします。
以上が、比較検討の勝率を左右する4スライドになります。このように顧客が求めている情報を適切に出し分けすることで営業組織の標準化を実現できます。
次回の最終回は、商談後だけではなく、営業が関わる各プロセスごとに用意するべき11の資料について解説します。
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上記までがSalesZineに寄稿した記事内容となります。
また、社内検討用資料を送付するツールとしてDSR(デジタルセールスルーム)というものがあります。
デジタルセールスルームと呼ばれる、資料などをWebページ1枚にまとめて見込み顧客に送付し、いつ・だれが・どのページをみたのかといった閲覧行動をトラッキングできるツールです。
お客様がどの情報にどれだけ興味があって、どのように自社課題を解決しようとしているかの洞察ができるのに加え、送付した資料が閲覧されているかどうか・閲覧されてから受注につながったかなども確認できるため、実施した顧客フォローが成果につながっているかどうかといった効果測定まで可能になります。
BtoBコンテンツ制作支援を提供する弊社Coneが「contentswork」というツールを提供しています。送付すべきコンテンツの整理から継続的な制作支援を行うプランも用意していますので、顧客フォロー・成約率でお困りの方はお気軽にご相談ください。