ホワイトペーパーを始める前に知っておきたい「良いコンテンツ」の定義と4つのヒント

BtoBマーケティングにおいてホワイトペーパーというタッチポイント作りは重要な施策の一つです。本連載では累計850社以上の資料作成を支援してきたConeの佐藤立樹氏が制作と活用のコツを解説します。1回目は「良いコンテンツ」とは何か?を考え、コンテンツ内容を企画するための4つのヒントをご紹介します。
2024年11月に佐藤がMarkeZineに寄稿した記事です。
※ 出典:ホワイトペーパーを始める前に知っておきたい「良いコンテンツ」の定義と4つのヒント
著者が経営する株式会社Cone運営の資料作成代行サービス「c-slide」では、これまでに累計850社以上の資料作成を支援しています。最も多い質問がホワイトペーパー関連です。
たしかにホワイトペーパーはWeb上、書籍でもなかなか「正解」が落ちていません。
そこで、本連載では弊社が顧客のホワイトペーパーに関して調査・構成・作成・分析・活用と幅広く支援する中で蓄積した「ホワイトペーパーの必勝法」を紹介していきます。
目次
ホワイトペーパーの”本当の”役割
ホワイトペーパーの作り方のコツを紹介する前に、まずはその役割を明確に理解しておく必要があります。ここの認識がズレていると成果が出ないからです。
まず、一般的なホワイトペーパー施策のイメージは以下のような流れだと思います。
- ホワイトペーパーがダウンロードされる(メールアドレスなどを取得する)
- メルマガでスコアリングを上げていく
- ホットリード化した段階でインサイドセールスから商談打診をする
ホワイトペーパーは、見込み顧客が知りたい内容を反映したタイトルになっており、ウェビナー等よりもコンバージョンのハードルがそこまで高くないため、Facebook広告等で配信すればダウンロード数は多くなるでしょう。マーケターの多くは、そのダウンロードしてくれた見込み顧客(リード)を、いかに商談化するか、スコアリングはどのように設定すべきかなどの実行・改善にフォーカスしていると思います。
しかしながら、ほとんどの企業でこのパターンはうまくいってないと思います。うまくいったケースをしっかりと紐解くと「商談化したとしても受注しない」「受注したとしてもすぐに解約になる」という事実にたどり着くと思います。
なぜなら、ホワイトペーパーをダウンロードした見込み顧客(リード)は、「サービスを買いたい・導入したい」と思っていないからです。こう書くと当たり前じゃないか、と思うかもしれませんが、ホワイトペーパーがダウンロードされ次第すぐ架電する、といった営業活動フローを組んでいる企業も少なくないのです。
実際、弊社がサイトに設置しているホワイトペーパーリードの直接的なコンタクト率(ダウンロードした顧客と連絡が取れる割合)は0.2%です。一方、サービスサイトに設置しているサービス紹介資料リードの直接的なコンタクト率は35%前後となっており、ホワイトペーパーの直接的なコンタクト率はサービス紹介資料と比較して、175分の1の効率です。
では、そのホワイトペーパーの役割とは一体何なのか。
それは「特定領域で、自社が【信頼できる会社】だと認知されるためのもの」です。リード獲得後に商談ではなく、信頼を獲得するのがホワイトペーパーの役割です。

見込み顧客にとって役に立つ良いコンテンツを提供し続けることで、「自社が〇〇領域での専門家・最も信頼できる情報提供元」というイメージを見込み顧客の中につくる。そうすることで、見込み顧客の中で課題が大きくなってきたとき、内製で解決ができなくなったときに声がかかるようにする。
商談を提案「する」のではなく、相談が「くる」ようにするのがホワイトペーパーの役割だと言えます。
役に立つコンテンツとは、それ自体が課題を解決するもの
見込み顧客にとって役に立つ良いコンテンツを提供し続けて、中長期的に商談化数を増やしていくことがホワイトペーパーの役割だと理解できていれば、ホワイトペーパー施策は軌道に乗るはずです。
では、役に立つ良いコンテンツとは一体どういうものなのでしょうか。
それは「コンテンツ自体が見込み顧客の課題を解決するもの」です。先ほど説明した通り、見込み顧客はサービスを導入しようとしているわけではなく、自分の課題を解決したいだけなのです。
しかし、多くの企業のホワイトペーパーは「それ自体では顧客課題が解決できないままに、後半でサービスを紹介」しています。
- 多くの失敗例:サービスを紹介し、導入してもらうことで顧客課題を解決しようとしている
- あるべき姿:提供するコンテンツ自体が、顧客課題を解決できるものになっている

たとえば、卵焼きの作り方のホワイトペーパーをダウンロードをしたとして、多くの企業が提供している情報は「卵焼きの材料だけ紹介している」ようなホワイトペーパーで、なんなら最後に「うちの卵焼きフライパンなら手軽につくれます!」とサービスの紹介をされます。
ただ顧客が欲しいのは「自分の力で卵焼きをつくれるようになる」溶き具合や焼き加減といった過程の情報です。それが細かく誰でもできるように記載されているホワイトペーパーが欲しいのです。
良いコンテンツとは、誰も知らない新たな事実を教えてくれるもの
もうひとつ、役に立つ良いコンテンツの種類があります。それはWeb上に落ちていない情報を提供してくれるコンテンツです。
ホワイトペーパーとは本来は「政府が発行する公的な書類である白書」のことです。白書とは、ある方面について、その現状の分析と将来の展望をまとめた実状報告書のこと。
つまり、ホワイトペーパーとは「これまで明らかになっていなかったことは実際こうなっていて、これからおおよそこうなると思うよ」という新たな事実と洞察を教えてくれるもので、その事実と洞察をヒントに各者が今後の自分の生活・仕事・営業活動をフィットさせていくためにあります。
しかし、多くの企業のホワイトペーパーは「検索すれば出てくるような情報を掲載してダウンロードさせ」ています。
- 多くの失敗例:検索すれば出てくる情報を転載している
- あるべき姿:自社しか持っていないデータや、調査を実施し新たな事実と洞察を提供する

ちょっと無理がありますが、また卵焼きで考えてみます。多くの企業が提供しているのは「卵はタンパク質豊富なので毎日食べましょう!」という誰でも知っているような情報。
しかし、良い情報とは「これまでの研究によると、1日1個の卵が健康に悪影響を及ぼす可能性は低い。しかし、1日1個以上食べると、心臓の健康に関連するマーカーや心血管系疾患のリスクが上昇する可能性がある」(*1)という新たな事実と洞察が含まれている情報です。
後者を知った人は、「卵食べすぎてないかな、ちょっと意識しよう」と生活習慣の見直しになるかもしれません。見込み顧客は、そういったWeb上に落ちていない情報を提供してくれるホワイトペーパーを求めています。
*1)参考記事:卵を毎日食べるのは健康的? 1日何個まで? 最適な量や調理法を米栄養士が徹底解明
役に立つ良いホワイトペーパーとはどんなものなのかがわかった上で、具体的にどんなホワイトペーパーをつくれば良いのか。マーケターがホワイトペーパーを制作する際に参考になる4つのヒントを次のページで紹介します。
役に立つ良いホワイトペーパーをつくるための4つのヒント
1.オリジナル調査で新たな事実を知れる
1つ目のヒントは、自社でオリジナル調査を実施し、その内容をまとめるというもの。
弊社の例だと、「営業資料作成実績から22種のスライド項目リストを作成し、弊社顧客の支援前の営業資料100個を調べて『営業資料に、どのスライド項目が含まれているか』を整理しました」というもの。
その結果、21%の営業資料に「コストシミュレーション」スライドが挿入されていないなど、重要なスライドが意外にも利用されていないということがわかりました。

既に記事化して一般公開していますが、事前に配信した際は反応も良くこのスライドをベースに構成の相談を受けることも。
「自社しか知り得ない情報をデータ化」したり「自社顧客にアンケートを取り自社しか知り得ないデータをつくる」ことで、見込み顧客にとって新たな事実と洞察を提供する、役に立つ良いホワイトペーパーをつくれるはずです。
2.ブックマークして手元に置いておける
2つ目は、ブックマークして手元に置いておけるようなコンテンツです。
たとえば「CVが滞ったときに確認する、〇〇個のサービスサイト改善チェックリスト」のようなものを指します。ダウンロードされた後も、課題があるたびに見返され、顧客に価値を提供するコンテンツになり得ます。
弊社は「パワーポイントのデザインパターン集。資料作成時に使える39のアイデア」という資料を、SpeakerDeckというスライド共有サービスにアップロードしています。資料作成時に、手元に置いてデザインパターンを参考にしながら自分の資料を完成させていくことができるようになっています。

一般的なホワイトペーパーと違い、顧客情報の入力なしで誰でも見れる形で提供していますが、現在視聴数は610,000PVを超えており、これを見て自分で資料をつくったもののうまくできないといった見込み顧客からの問い合わせも多数発生しています。
自社を信頼できる会社だと認知してもらえれば中長期的な商談数増加に繋がる、良い例かと思います。
3.ダウンロードして編集して使える
3つ目は、編集ができるテンプレートをホワイトペーパーとして配信・配布するというものです。
弊社は営業資料・ホワイトペーパー・ウェビナー資料などの資料のテンプレートを配布しています。(こちらも個人情報入力の必要なしでの提供)。

ヒント2のチェックリスト同様、営業資料のテンプレートをダウンロードして、自分でつくってみてデザイン面はなんとかなったものの、受注率の改善やトークの見直しという点でご相談を受けることが多くなっています。
弊社の事業以外でももちろん実施可能です。Webマーケティング会社であれば、「顧客インタビューのヒアリングシートテンプレート」や「Web広告数値の分析シート」などが該当するでしょう。
4.レシピ・裏側を知れる
Web上に落ちていないという観点では「体験談」や「成功事例」があります。一般的なステップ解説ではなく、課題に対してどういう施策を講じたことで、どのような成果が上がったのか、という成功の裏側は見込み顧客にとって価値があります。同じように実施すれば成果が上がる可能性があるからです。
逆に言えば、ホワイトペーパー内で「真似すれば同じようにできる」レベルの充実した内容にする必要があるということです。クライアント企業の成功事例はもちろんですが、自社が実践して〇〇が改善された例なども良いかと思います。

役に立つ良いコンテンツをつくれている企業は少ない
ここまで、役に立つ良いコンテンツの定義と4つのヒントを紹介してきましたが、それができている企業は少ないのが事実です。
株式会社リンクアンドパートナーズが実施した「ホワイトペーパーの満足度と効果性に関する調査」でも、ホワイトペーパーをダウンロードした後、内容に対して「期待外れだった」と回答した人は82%という結果が出ています(これもオリジナル調査のひとつですね)。

逆に言えば、役に立つ良いコンテンツを作成・配信することができれば、特定領域で競合他社よりも自社を専門的だと認知してもらうことができ、中長期的な商談数増加を図ることができます。
ぜひ、本記事内容を参考にしていただき、ホワイトペーパーを本当に成果が出る施策に変えていきましょう。
次回は、【ホワイトペーパーは、マーケティング施策ではなくセールス施策である】と題し、ターゲットに適したテーマの出し方を紹介します。
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上記までがMarkeZineに寄稿した記事内容となります。
